葵の章

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そのまま布団に組み敷かれるように、 覆い被さってくる男性の体重。 着物の重さも相まって、それはさらに質量を増しているように感じる。 「悪いようにはしない。  正直に答えよ」 そう告げると、目の前で妖しく吊り上がる口角。 春日局が男性ってだけで驚愕なのに、 さらに超がつくほどの美形だなんて。 そんなことさっきのお寺の立札にも書いてなかったし、 歴史の授業でも習わなかった。 漆黒の髪の間からのぞくその瞳に魅せられてしまったのか、 私の首は勝手に小さく頷いていた。 「名は、何と言う?」 「……葵、です」 相変わらず冷たい声色に怯えつつ、絞り出した自分の名前。 「葵、ここに来るまでの事を覚えているか?」 それを聞かれたらどう答えようか、 まだ考え中だったのに。 でも、直感でなんとなく、 この人にはきっと隠し事は通用しないと思った。 なんたって大奥の総取締…?だもんね、よく知らないけど。 「…はい。  私は今よりずっとずっと未来の…、  平成という時代から、    何故かここへ迷い込んでしまったようです。」
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