葵の章

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そうか、私はこの厳重なお城にすんなり入り込んだあげく、 どこかで気でも失っていたところを、そのまま牢に入れられて。 「上様」のおかげで生きているけど、 本来ならこんな怪しい侵入者、 その場で殺されていたっておかしくなかったってこと。 それまではどうにか把握できたんだけど、 私に決して他意はないことをどうすれば証明できるんだろう。 「…少々手荒になりますが、  尋問の基本ゆえ、騒ぎ立てなされますな。」 両の手首を頭上にひとまとめにされ、 春日局様の右手は私の左胸を覆った。 「――っ!!」 予期せぬ場所に、とつぜんに訪れたその感覚に、 私の身体は大きくびくんと揺れたあと、固まる。 尋問の基本とはきっと、私が武器や怪しいものを所持していないか。 まだ金属探知機とかないもんね、この時代。 だから仕方ない、んだろうけど――― 「ん、…っ」 あ、なんか変な声出ちゃった。 だって、どういうつもりなのか知らないけどこの人、 触り方が…… 「…『平成』の女子は、  随分と敏感なのですね…?」 違う違う、平成とか江戸とか関係ない!!! 武器の類を探すのなら、もっとしっかり確かめるように触れればいいのに。 この人の手は、そうっと触れるような、這うような所作で。 「…っ、あなたの、触り方の所為です…っ」
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