葵の章

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そう口答え紛いの言葉を口にすると、 その瞳は少しの戸惑いも見せずに。 「では尋問になりませんから、  『手』を使うのは止めましょう。」 うっすら笑みを浮かべたその唇で、 私の耳たぶを食んだ。 「あ…っ!!」 その途端、隠しようのない声が漏れてしまう。 こんなの、手よりいっそうタチが悪い。 「……葵殿、この――」 右耳にしていたピアスの裏側、 キャッチの部分を転がす春日局様の舌。 「貴金属のようなものは…?」 「…っ、耳飾り、です」 おかしい、私の身体もどうかしてる。 さっき牢の男に首筋を舐められたときは、 気持ち悪くてしかたなかったのに。 「確かに、耳に宝石の類を付ける女子は、  少なくとも江戸にはおりませんね…」 声と、吐息と、舌の感触に。 どういうわけか私の身体はどんどん感度を煽られていく。
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