葵の章

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「葵殿、御御足をお開き下さい。」 まるで、手相を見せてください、 とでも言うときのような気軽さで、 春日局様は命じてくる。 そんなの、勝手にこじ開けて調べてくれればいいのに。 ……ああ、手を使わないという口約を、 律儀に守ってくれてるのか。 いっさいの動きを止めたまま、 彼と私の間には10秒ほどの沈黙が流れていった。 「……覚悟を決めなさい。 この江戸城大奥に脚を踏み入れたが最後、 生きてここから出られる日など、 もうやって来ないのですから。」 仮に脱出劇の末生きて出られたとしても、 私が帰れる場所なんて この時代にはどこにもない。 この人の言うことに従うほか、 私に選択肢は無かった。 スカートの裾を握って捲くりあげ、 膝を立てて両脚を開いてゆく。 私の膝が震えているのは、 春日局様が怖いから? 見られることが恥ずかしいから? 「……そうです。 聞き分けの良い女子ですね。」 そう優しい声色で呟くと、 彼の唇は、 調査とはおそらく無関係な箇所、 内腿に吸い付いてくる。 彼の唇の湿った感覚に腿を撫でられる度に、 私の膝は空中でぴくりと揺れた。
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