葵の章

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「騒ぐなと言ったであろう…?」 男と私との顔の間に割って現れ、ぎらりと光るそれ。 長さこそないものの、おそろしく切れ味のよさそうな、小刀だった。 その妖しい輝きは、私を再び絶望の中へ突き落とす。 こんなことなら、 さっきあのままお墓の前で 気絶するように死んだほうが良かったよ。 男の舌が、首筋を這って下のほうへと降りていく。 好きでもない男の舌の感触は、 快感とは程遠く、鳥肌のたつような嫌悪感しか覚えない。 女の身体は、そういう風にできているのだと思う。 殺して。 私を犯すのなら、 そのあとどうせ殺すのならば、 どうか殺してからにして。 「何をしている。」
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