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とにかく病院で看てもらうのが一番早い。
市販の薬よりも処方してもらったもののほうが効きが早いし、なんなら点滴を打ってもらうことも出来る。
一度振り返って、雄大の言葉を理解した佳苗ちゃんが大丈夫、留守番なら出来ると笑っていた。そしてその笑顔を確認してようやく彼女は大きく息を吐き出した。
疲れと風邪による高熱だった。
彼女は体調の悪い中一日頑張っていたんだろう。
点滴をしてもらうことになって、横になった瞬間にゆっくりと目を閉じた。
「どう? 佳苗ちゃんは」
『大丈夫、穂果ちゃんと一緒に遊んでる。夕飯ももう済ませたから』
「ありがとう。こっちは今点滴打ってるから、数時間したら戻ります。それじゃあ、またあとで」
『譲! 世話掛けてごめん、とか言わないでくれてありがとう』
それだけ言うと電話は切れた。
変なありがとうだけれど、うん、確かに以前だったら、そう言って謝っていたかもしれない。
でも今の俺が雄大の立場なら謝ってなんて欲しくない。
ありがとうの一言のほうがいい。
迷惑だなんてほんのこれっぽっちも思っていないし、雄大の役に立てるなら全然嬉しいんだ。
それにさっき保育園を出て、雄大の名前を呼んだ瞬間に全部を理解してくれるように、サポートしてくれたのが嬉しかった。
穂果もそうだけれど、一瞬でわかってもらえてすごく安心したんだ。
病室に戻ると佳苗ちゃんのお母さんは目を覚ましていた。
ほんの少しでも横になれたのがよかったのか、それとも点滴が効いたのか、さっきよりも目がしっかりしている。
「瀬戸さん……すみませんでした。ご迷惑を」
声も大分しっかりしてきた。
「気にしないでください。よかったです。ただの風邪と疲れで」
「……」
「点滴で良くなったからって無理はダメですよ。薬で無理やり快復させているだけなので、しっかり休んで体力をちゃんと付けないと。こちらこそ差し出がましいことを」
余計なお世話かもしれない。
小さな親切大きなお世話かもしれない。
でもついやってしまった。
昔の俺ならしない、でも今の俺は手伝いたいと思う。
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