番外編 ある朝、襲ってみました。

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穏やかな寝息、一定のリズムで上下する胸、熟睡しているのか、少し頬を撫でても長い睫毛はピクリとも動かない。 「……譲?」 起こしたいわけじゃなくて、寝ているかどうかの確認。 どの譲の顔だって好きだけど、寝顔を見られるようになったのは最近だから、自分の中でかなりレア度は高い。 一緒に暮らせるようになったら、毎日見られる。 ただ今はそうはいかない。 同棲はしたくないんだ。 同棲するならその前に「一緒に暮らそう」の一言を言いたい。 つまり予約してあるプロポーズをしたいんだ。 譲の隣に一生並んでいる、それは俺の中で揺らぐことはない。 でもそのプロポーズをするなら最高にロマンチックなほうがいい。 俺にも譲にも次の相手がいないのだから、一生に一度の場面は最高な思い出にしたい。 隣でじっと見つめていても譲は起きない。 唇とか綺麗な形で何時間でも見ていられる。 起きている時は澄み切った黒い瞳が色っぽくて、でも眠っていると今度は長い睫が強調されて、なんとも言えない色っぽさがある。 「……ん」 ヤバ……うっとりしすぎて、指で見るとこ見るとこをなぞっていたら、こそばゆいのか肩を竦めて眉を動かした。 しばらくじっと金縛りみたいに固まって、譲の意識がまた静かに沈んでいくのを待っている。 「んー、ぅだい」 ヤバいヤバい……起きてもいいけど、レアな寝顔をもう少し見ていたい。 譲はこっちに寝返りを打つと、普段は何もないはずのスペースに何かがあると、寝ぼけた手で弄っていく。 何か口の中でだけ呟きながら、服の上から触られるだけでも、朝の刺激としては充分だ。 「……雄大……」 そう確かに聞こえて、瞼は閉じたままなのに、綺麗な形の唇が微笑んでくれた。 そして俺の身体をぎゅうっと抱き締めるとか、違う意味でまずい。 というより危ない。 寝ぼけた声はなんだかフワフワとした響きで、可愛くて色っぽくて、そんな声が何度も俺の名前を呼びながら、まるでキスするみたいに俺の服に唇を当てて笑っている。 あ……ダメだ。何かスイッチ入った。 「ん……だぃ……」
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