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「大成功でしたね」
先生が用意してくれた控え室で全員が何だか興奮している。
「恒星さんの作ってくれた衣装すごいですね」
「まぁね。何せ僕この分野のカリスマだもん」
たしかにテレビで見かける戦隊ヒーローの衣装と大差ない。それどころかこっちのほうがカッコいい気さえする。
「あの決めポーズと台詞もすごいし」
「でしょお~♪ 俺の新たな才能だよね」
マスクだけを取って、まだ皆、衣装を脱がずにいた。
耳には大合唱になった園児達の声援がまだ響いている。
猪野君は初めて会った時は、言葉は噛みまくりでとても小さくて頼りない感じだった。
でもさっきは大きなはっきりと、広間の隅々まで聞こえる声で台詞を言っていた。理沙も含めて皆で頑張って作り上げられたヒーローショーは満場一致で大成功だったと思う。
「譲は?」
赤い衣装を身に纏った雄大はもうまさにヒーローで舞台上で何度見惚れてしまったかわからない。
本当にカッコよくて、独り占めしたくて困るくらいだった。
「楽しかったです。すごく」
「俺も楽しかった」
園児達は目をキラキラ輝かせてすぐ目の前にいるヒーローを全力で心配したり、応援したり、熱気がすごかった。
穂果も頑張ってくれて、佳苗ちゃんと並んで、手製のボンボンを振りながら一生懸命に応援してくれていた。
そんな園児の後ろには忙しいのに来てくれた保護者の方々が並んでいて、その一団には佳苗ちゃんのお母さんもいる。
園児達ほどの応援はないにしても、最後にはたくさんの拍手を送ってくれた。
楽しめるかな……そんな心配を吹き飛ばしてくれる熱気に、全員気持ちが少しフワフワと浮いている。
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