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何故か興奮する松姫の手に引かれ、
一気に大広間へと流れ込んだ。
正面向かって右側の椅子に座る婦人は、真っ赤なタイトドレスにラメがキラキラ。おまけにその後頭部には孔雀のような羽が天高くそびえ立っている。まるで祈祷師のようだ。変わって左側には、これまた緑の派手なドレスと派手な化粧をして、暑いのか仕切りに侍女に扇子で扇がせている。
『遠慮は要りませぬ、さあ中へ』
松姫に促されても、はいそうですかとは中々に入りずらい。孔雀と緑のおばさんだけならまだしも。この大広間の両側からは、ずらりと居並ぶ厳つい男たちの視線が、矢のように春巻に突き刺さって来るからだ。
『何をしておる。早よう中へと参らぬか!』
痺れを切らしたのか、孔雀がそう声を飛ばしてきた。松姫も、
『小平太、お前が春巻殿を連れて入らねば始まらぬではないか』
『滅相もござりませぬ!某はお目見得以下の身分、どうかここにて』
『ならぬ!』
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