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『童の頃とは違いまする』
『ならばもうよい!』
声を荒げて立ち上がり、その場を去ろうとする松姫の動きが止まった。
その先に髪と衣服を惨めなまでに乱した春巻が、貧乏神のように茫然と佇んでいたからだ。
『お…お前は?』
この突飛な出現に三人はひどく驚いた。何故なら、ここは余所者が滅多に侵入できる所ではなかったからだ。我に返った小平太が箒を構え、松姫を警護すべく前へ躍り出た。
『何奴!』
『あのう…ここは何処なんですか?今の皆さんのやりとりは…?』
ついさっきまで自分の部屋にいたはずなのに…そうだ!あのドアノブは?!
どこにも見当たらない。なくしたのか?
『答えぬか!貴様は何者だ、どこから忍び込んできた!』
先程とはうって変わって、男らしく太い声を放つ。
『いや、私もどうしてここにいるのか、全く理解できてないもんですから、困ってるんですよ』
『もしや、この御仁は!』
肝っ玉母さんが、頭のてっぺんから吹き出すような声を張り上げた。
『はしたない声をあげるでない。何が言いたいのか、私にもわかります。そなたはもしや時を旅して来られたお人なのか?』
時を旅して?…まさか本当に戦国時代へ飛ばされたのか。
それにしては目の前の三人は…
この姫様と呼ばれている美女は、真っ赤なチャイナドレスを着ている。靴も赤いハイヒールだ。箒をを構えている若者は法被を着てはいるが、それ以外はポロシャツにジーパン、それにスニーカーを履いている。肝っ玉母さんに至っては、見事なまでに割烹着を着こなしている。とてもここが戦国時代とは思えない。
『そなたは何世紀のお人じゃ?』
好奇心丸出しで、可愛い瞳を輝かせ松姫が眼前に迫って来た。
『な、何世紀って…』
そんな風に聞かれたことは生まれて一度もない。また簡単に答えられるほど、この状況も理解できていない。
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