「お守りの効用」―茨城県・筑波山―

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「お守りの効用」―茨城県・筑波山―

 先日、フト時間ができた為、茨城県の筑波山に登ってきた。関東平野の東に、綺麗に立つ山だ。平日の昼間なら、僕の家から車で小一時間。登山道入口のある、大鳥居に着く。昔から、遠足などで何度も訪れた地ではあるが、急に暇になった日の、半日の暇潰しには最適のコースだ。  良い季節ではあったが、薄曇りの月曜日。人影はまばらだった。無料の駐車場に車を止め、軽い身支度の後(のち)、山頂を目指す。ケーブルカー駅のある山頂に出て、そこから男体山頂・女体山頂と回り、下山のコースを辿(たど)る。 「山頂を極(きわ)める」という行為は、いまだ見果てぬ夢を追い求めている僕のような人間にとっては…自分の力量さえ、わきまえていれば…割りと手軽に「達成感」「征服感」を満足させてくれる行為だ。  登り始めてから三時間。「筑波山登山」の終点は、出発点でもあった、麓の神社だ。  本日の目的を達成し、神社の境内をブラつく。僕には、神社仏閣巡りをする趣味は無い。しかし、たまにこういう場所に来ると、たいてい訪れる場所がある。こんな言い方をしてもよいのかどうかはわからないが、たいていは社務所の一角にある、「お守り売り場コーナー」だ。  その日も僕は、そこで足を止める。そして、升目(ますめ)で区切られ、数々のお守りが並んだ木枠の中をのぞき込む。左上の方から順番に目を走らせてゆくと、「幸せ・夢が叶(かな)う」と書かれた、香袋のお守りに目が留まる。とりあえず、ひと通り目を通した僕は、先ほどの「幸せ・夢が叶う」香袋のお守りに視線を戻す。どうやら、本日の買物は決まったようだ。「それ」を手に取り、ひと安心…。  僕は、多分に心配性なところがある。夜中に、僕の大切な人達が不幸な出来事に遭う夢を見て、ハッと目が覚めてしまう事も度々だ。 “ケビン・コスナー”氏主演の映画『ザ・ボディーガード』に、こんな場面(シーン)があった。映画のクライマックスを迎える前夜。彼がガードする女性シンガーの子供である少年との会話だ。その件(くだり)は、僕がこの映画の中で、最も気に入っている情景の一つだ。
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