君が、いた。

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 教室の戸を開けたら、そこには犬がいた。  忘れ物を取りに、夕方の学校に来たらお座りをしてこちらを見ていた。    どこかで見たことある犬だ。小さくて白い犬。赤い首輪もしている。野良犬ではなさそうだ。  確か犬種は…… 「ポメラニアン?」 「マルチーズだよ」  突然聞こえた女の子の声に、俺は驚いて犬を凝視した。  え、うそ。喋る犬……? 「バカ、どこ見てんのよ。隣よ隣」  言われてようやく気が付いた。犬の隣に、見覚えのある女子生徒がいた。 「なんだ、カンナか。ビックリさせんなよ」  カンナはいまどきの女子高生にしては大人びており、物静かな雰囲気をまとった、俺の幼なじみである。 「つーか、何してんの。犬を教室に入れたらダメだろ」 「ソウタこそ、夏休み今日で終わって、明日から新学期なのに何しに来たの?」 「忘れ物取りに来た」  教室ど真ん中の机から一冊のノートを取り、カンナに見せた。 「それ、宿題……忘れたらダメなやつ……」  ため息を吐かれた。だから取りに来たんだろうが。
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