君が、いた。

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「で? なんで犬連れてんの?」  息だけを荒げて行儀よく座る犬を見ながら、俺はカンナに問う。  するとカンナは、犬を抱き上げた。 「散歩。ダメって言ったんだけど、聞かなくて。幸い誰も居なかったし、大丈夫かなって思って」  お気楽だな。    犬はカンナの頬を舐めた。なんだか幸せそうな顔をしている。 「マル、だっけ。何回か会ったことある」 「そうそう。多分マルも覚えてるよ。ほら、マル、行っといで」  カンナはかがんでマルを腕から降ろした。 「へっへっ」  マルはこちらを見上げて、ゆっくりと歩いてきた。おおお、来たぞ。  俺もしゃがんで手を出すと、マルはその手をクンクンと嗅いで、舌を出した。 「うひゃっ! くすぐったい!」  思わず手を引っ込める。するとマルは首をかしげた。かわいいなおい。 「おーよしよし」  首から頭を撫でてやると、気持ちよさそうに身を委ねてきたので、全身をワシャワシャ撫でくり回してやった。
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