白馬にときめくお姫様

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 教室の戸を開けたら、そこには三年ぶりに会う彼がいた。彼は、昔と変わらぬ制服をまとい、窓辺によりかかりながらこちらを見つめていた。逆光のために彼の表情はわからないが、彼らしい笑みを浮かべているのが不思議とわかった。 「卒業おめでとう、お姫様」 これも昔と変わらぬ軽口。 「何でいるのよ」  彼の調子に乗せられ、三年ぶりの再会だというのに、彼女も昔と変わらぬ冷たい言葉を返していた。 「相変わらずだな」  冷たい言葉にもかかわらず、彼はどこか嬉しそうだった。 「せっかく白馬に乗った王子様が迎えに来てやったのに」 「誰が王子様よ…………だいたい、そんなこと誰も頼んでないわ」  視線をそらす彼女に、彼はふっと悲しげな笑みを浮かべる。 「本当に、もう、諦めるのか?」 「いまさら…………」 「チームのみんなも待ってる」  彼のその言葉に、彼女はぐっと拳を握りしめた。 「無理よ…………私、もう、戦えないから…………」  震える声に、彼は確信した。 「まだ未練があるんだろ?」 「…………未練なんてない」 「本当か?いいのかよ。まだチャレンジできるのに、諦めて。夢だったんだろ?ずっと頑張ってきたんだろ?こんなところで諦めたら一生後悔するぞ」  彼の言葉が心に突き刺さる。それは、ずっと自問していた言葉ばかりだった。  三年前、夢見た世界で挫折した彼女は、 この高校へ逃げ込むように入学した。  心が折れてしまった。もう戦えない。もう辛い思いをしたくない。そう思った。でも、諦めきれない自分もいた。夜空を見上げるたびに。まだ戦えるのに、諦めてしまっていいのか、何度思ったかわからない。  答えが出ないまま、今日、卒業の日を迎えた。  うつむく彼女に、彼はふっと息をはくと、窓に手をかける。そして、一気に窓を開けた。
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