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教室の戸を開けると、そこには床がなかった。
ここは本校舎3階、私のクラスの教室だ。
昨日の授業中に突然校舎の半分が崩れ落ちた。
幸い、私たちのクラスは体育の授業中で体育館にいた。
バレーボールをしていたのだが、突然地震が起こり、この世のものとは思えないような音がした。
私たちは身を低くした。
1分くらい経ったのだろうか、揺れは収まった。
みんなで体育館の外に出ると、校舎の3分の1が崩れてなくなっていた。
私の学校の校舎はそれほどに古くはなかった。
大勢の後輩や同級生が行方不明になってる。
行方不明者を捜索しているのだが、誰ひとりとして見つかっていない。
150名もの生徒と教員が一瞬にして、いなくなってしまったのだ。
本校舎の、中央部分に大きな穴が開いていた。
この場所からだとよくわかる。
穴の底は見えず、真暗だった。
レスキュー隊員がこの穴にもぐったが、誰も戻ってこなかった。
一体ここで何があったのだろうか。
この暗い空洞から、風切り音のような、うめき声のような音が聞こえる。
足音が聞こえた。
音のする方を見ると、クラスメートの百合香だった。
「あまり近づいたら危ないよ」
「うん、でも弟が」
私の弟は高校一年生。
今、私が立っている場所の真下に弟の教室があった。
涙が出て来た。
すると、暗い穴の中からだろうか、何かが聞こえる。
風を切るような音ではない。
なにか、ざわざわとしたような、そんな感じの音。
だんだんその音、いや、たぶん声だ。
「アー」と言うような声が聞こえた。
暗い穴の外側で、何かがうごめいている。
よつんばいで蠢いているようだ。
声がよく聞こえるようになってきた。
私は耳を澄ませた。
「ゲギュヴェギャショキュピョカミュ・・・」
なにかの呪文のように聞こえた。
そして・・・
いきなり光ったのだ!
とってもまぶしかった。
私は目を閉じた。
目を開くと、穴の底に火が灯っているように見えた。
少し明るくなった穴のふちに、人のようにも見えるが人ではない、黒くおぞましい生き物たちが私を見ているようだった。
頭のように見えるところには、角があった。
顔のように見えるところには、大きな裂けたような口があった。
その口の上の方には、ほとんど縦になったような眼があった。
身体のように見えるところには、翼があった。
腰のように見えるところには、尾があった。
手や足のように見えるところには、棘があった。
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