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教室の戸を開けたら、そこには殺人鬼がいた。
その姿は一見普通の学生で、この辺の学校ではめったに見られなくなった真っ黒な学生服を着ている。
なぜ彼が殺人鬼だと思ったのか、いや。私は確信している。
彼のまとう雰囲気が、とてつもなく禍々しかった。どす黒く、紫も混ざっているような、同じ空間に居たくなくなる。
彼の目が濁っていた。汚れているというよりは穢れているというか、彼が一種の線を越えてしまっていることが容易に想像できた。
彼には子どもらしい雰囲気が皆無だった。彼のまとう雰囲気が腐った配水管の中の汚水のようで、彼の目が死んだ魚だってここまで濁ってはいないと裁判を起こしそうなほど表面に反射する蛍光灯の光しか見えないから、というのもあるけど、学生のこの姿のまま精神面だけ30年ほど過ぎ去ったような妙な貫禄があった。
彼の口元がにやりと、歪んだ。それを見て彼の顔立ちが本当なら少し幼げであることに気付き、少しだけ安堵した。その笑い方はイビツだけど、無邪気さを感じたからだ。
それでも私の足はすくんでしまって、教室の戸に手をかけたまま、動けずにいる。
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