0人が本棚に入れています
本棚に追加
教室の戸を開けたら、そこには孤独なヒッチハイカーの姿があった。教卓の上に鎮座し、悩ましげな表情で、親指をこれみよがしに立てている。
ヒッチハイカーは、足を踏み入れた少年と目があうと、軽くウインクを投げた。拾ってよ、と言わんばかりに。
一方の少年は眉をひそめ、めんどくさそうに聞く。
「なにしてんだ? こんな遅くまで」
「見てわからない? ヒッチハイクよ」
「わかるかよ。教室でヒッチハイクするやつなんて今まで見たことねえし」
バカにした顔でヒッチハイカーを一瞥すると、少年は自分の席に向かった。
「で、そういうあんたこそどうしたのよ? もうすぐ下校時刻なのに」
「忘れもの」
少年は机の中からバラの記章をとりだし、制服の胸あたりに安全ピンでとめた。
「じゃあな。おまえもバカやってないで、さっさと帰れよ」
「あ。待って」
去ろうとする少年をヒッチハイカーが呼びとめた。
最初のコメントを投稿しよう!