春色のシーズン

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「ねえ。わたしも連れてって」 「ムリだな」 「なんでよ!」 「だって、おまえ留年したじゃん」  そう卑下すると、少年は教室をあとにした。  静寂の訪れた教室で、ヒッチハイカーは閉まった戸を名残惜しそうにいつまでも眺めていた。心細そうな瞳にうっすらと涙を浮かべながら。  ヒッチハイカーの持つスケッチブックには、デカデカと『高校卒業!』と書かれてあった。  窓の外はもう暗い。
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