俺はバーテンダー

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「マスター、来たよ」  扉を開けて入ってきたのは女学生だった。彼女は梓(アズサ)。確か歳は十九だったはずだ。 「はい、いらっしゃい」 「いつものお願い」 「かしこまりました」  俺が取り出したのは、【梓】と大きく書かれたワイルドターキーと、ショットグラスだ。 「あれ、見ない人ですね」 「あ…ども…」  昴夜は軽く頭を下げた。 「東京からだってさ、梓ちゃん」  へぇ、と言って昴夜の隣に座る梓。 「東京から…初めまして。梓です。何飲んでたの?」 「ども、昴夜です。カクテルを二杯ほど。ジントニとダイキリをね」 「マスター、同じものを昴夜さんに。マスターも飲もうよ」 「かしこまりました。昴夜君、彼女一つ違いの後輩だからタメでも良いよ」 「何でマスターが言うのよ。こういうの私が普通言うんじゃない?」  ショットグラスをもう二つ用意し、ウイスキーを注ぐ。 「はい、ワイルドターキーのストレートね。昴夜君にはチェイサーも」  梓はストレートを見るとスッとグラスの半分まで開けた。もったいないと思ったのかグラスを置き、チャージのナッツを口に放り込む。対する昴夜はちびちびと、味を確かめるように飲んでいる。 「昴夜君は、お酒が好きですか?」 「あ、それ気になる」 「あぁ、好きだよ。嗜好品全般ね。でもウイスキーは久し振り」 「一番好きなのは?」 「うーん…やっぱりジン・トニックかなぁ」  昴夜はもう一本、煙草に火を点ける。  その時だった。  遠くで何かが揺れ、数瞬遅れて爆発音が耳に届いた。一瞬、梓はビクリとした。ここは地下だ。客に危険が及ぶ可能性がある。 「この爆発…もしかして研究棟の辺りかもしれない」 「…え?」  昴夜は財布を俺に投げて、腰から銃を抜き取り構えた。 「マスター、勘定をお願いします。財布は預かっててください。戻りますから」  そう言うと、昴夜は店を出た。 「マスター、私たちも行かないと!」 「…そうだね」  OPENをCLOSEDに。そして腰からは銃が。 「バーテンダーとして、客を護る責務があるからね」
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