第1章 母、困る

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なんだか言葉責めをしている気分になった。うん、悪くない。今日日、お金を出しても若い男にこんなプレイはできないだろう。 じゃなくて。はよ答えろ。話が進まないじゃないか。辛いのは私も同じなんだから。 「中二、くらい、かな?」 約二年!そう叫びながら私の精神はテーブルに突っ伏した。 長い。二年も片思いて。乙女か。 だいたい男って街に乳のデカいネーちゃんが歩いてればそいつに惚れるような人種じゃないの? 「あ、でも本格的に好きになっちゃったのが中二くらいだけど、それより前からもけっこう好きだった」 何言ってんだこいつは?人生の半分を片思いしてるって事か?短大卒業するくらいの期間でも長いのに下手したらこいつ義務教育が終了するくらい好きだったって事になるよ? 普通は兄妹って思春期きたら疎遠になるものだと思ってた。普通は家でだらしない女の事なんか好きにならないでしょ。わがままでうるさくて、でも人前じゃ猫かぶって。 普遍的な感情を持っているとしたら普通は妹の事なんて好きになるはずないんだよ。 でもあれだ。ウチのカホは家でも別にだらしなくないしわがままでもなければうるさいわけでもない。時と場合によってダラっとする時もあればビシッとする時もあるけれどそれは人として当たり前の事で、別に性格を偽っているわけじゃない。表裏のない良い子だ。 これじゃあケンジが惚れても文句ないなぁ。じゃなくて! 駄目だ。考えれば考えるほど兄が妹に惚れてしまった事が必然なんだと確信させていく。 なんて完璧な子どもを私は育ててしまったのだろうか。私の経験を糧に教育本を出版したら売れるかも。 と、いつもの馬鹿な妄想はさておき私は彼に聞かなければ行かない事が色々あるのだ。 「あんたそれ本当なんだよね?」 「ほ、本当に決まってるだろ!こんな事本当じゃなきゃ言わねえよ・・・」 だよねぇ。 ここまで来て嘘だったら雪崩式のタイガードライバーをおみまいしてやるところだったよ。もしくはウラカンラナ。 「んー・・・。よく妹なんか好きになったねぇ。で?あの子のどこが良いと思ったの」 なんか面接官みたいだなと思いながら言う。
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