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「う、うわあ……唐突ですが揚さんたすけてー」
敵対の意思がないのを揚は知っていた。もし捕らえに来たのなら攻撃すべきだ、だがそれをしなかったのは話し合いに来たのだろう。それに青年の救援要請は半笑いだ。
「ハーレイジ・コルニア、か。どうして此処が?」
「……、グリモワール、彼は?」
「私の親友です」
胸を張り誇らし気な青年を鷲掴むまま、ハーレイジ・コルニアは鼻で笑った。
「そうか、良かったな。時に、ベネディクトの一人が消えたんだが経緯を知らないか?」
「……ああ……あいつか……」
揚には心当たりがあった、それは青年もそうだった。苦い顔をして、事の顛末を話すと、ハーレイジ・コルニアは何回か頷いた。
「そうか、良かったな」
青年の頭を二回叩き、踵を返した。
「待て、ハーレイジ・コルニア。なにをしに来た?」
「……グリモワールの回収を失敗しただろう、それの回収だ」
「……すまない」
「私のベネディクトとしての仕事だ、謝るな、意味が分からん」
ベンチに座ったまま、空を眺めている。それだけでも温かいと思う。未だに未完であるグリモワールだが、青年はそれでも誇らしく言うのだろう。
「変わりませんよ、何時だって。千古不易ですから」
だからこそ青年から大人になりつつある揚は言うのだろう。
「変わらせない、何時だって。親友だからな」
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