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今まで適合していた本が、主人と認めずに弾いたのだ。人が人を嫌うように、彼女は嫌われたのだ。何故、と問う。繰り返し頭の中で反芻しても、無駄であった。グリモワールの少女は宙に浮くアルス・ノトリアに触れ、愛しそうな眼差しで頁を捲った。
「……アルス・ノトリアの模造品とは言え……御前は読まれていたのだろう、何故、彼女を否定する? 私の心配はするな、私は私だ、御前は読まれなければならない、さあ」
アルス・ノトリアを閉じて少女は床に座る彼女を見据えた。
「アルス・ノトリア……私はね、読まれたい、御前は読まれている。読んでくれ、理解してくれる人がいる、なのに否定するとはなッ、読者の所に戻りやがれ若造がッ!」
壮絶な勢いで投擲されたアルス・ノトリアは彼女の懐に衝突し、静寂と共に彼女は目を皿にしていた。グリモワールの少女の身を按じたアルス・ノトリアに激怒し、味方を投げ飛ばしたのだから当然であったが、アルス・ノトリアが幾分落ち込むような気配をベネディクトの彼女は感じた事に驚いていた。
「そのアルス・ノトリアは大層御前を好いている、御前は良い人間のようだな……それはそうと、名は?」
「……ハーレイジ・コルニア……だ」
「ハーレイジ・コルニア……ふむ、私の事は…………いかん、私には名前がないのだったな……まあ良い、ハーレイジ・コルニア、御前に頼みがあるのだが、どうだろうか」
唇が弧を描き、幼い姿のグリモワールは笑っていた。
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