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一
「つまり、ハーレイジ・コルニアと言う人を知っていれば良いのか」
「ハーレイジ・コルニアはベネディクトに付いて色々教えてくれまして、今はどうしているのかは知りませんね。前にベネディクトの誰かが持っていたアルス・ノトリアはコルニアのものじゃなかったんですが、気になるなあと」
「僕はベネディクトの連中は好きになれなかったが、やはりベネディクトだから悪いとは限らないか」
すっかり長話で乾いた服の青年は徐に首肯する。揚は、そんな青年に一つ訪ねた。
「好きなのか?」
「はあ? なにを仰有るかと思えば、揚さんとも有ろう御方が……やれやれ」
「違ったか……読み違えたなあ」
「当たり前です、私の執筆した全ての作品を鼻で笑うんですよ! 読めた癖に鼻で……ハーレイジ・コルニアめ! 見返さねばならないんですよ、分かりますか!」
「ま、まあ、それなりに」
「ハーレイジ・コ……、ん?」
頭の上にある手に青年は振り返った。漆黒のローブを翻し、傍らには魔術書を携えた人物。胸元には銀の十字架が揺れ、その全てがベネディクトであると確信させた。
「呼んだか、グリモワール。また鼻で笑いに来てやったぞ」
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