第1章

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「う、うわあ……唐突ですが揚さんたすけてー」 敵対の意思がないのを揚は知っていた。もし捕らえに来たのなら攻撃すべきだ、だがそれをしなかったのは話し合いに来たのだろう。それに青年の救援要請は半笑いだ。 「ハーレイジ・コルニア、か。どうして此処が?」 「……、グリモワール、彼は?」 「私の親友です」 胸を張り誇らし気な青年を鷲掴むまま、ハーレイジ・コルニアは鼻で笑った。 「そうか、良かったな。時に、ベネディクトの一人が消えたんだが経緯を知らないか?」 「……ああ……あいつか……」 揚には心当たりがあった、それは青年もそうだった。苦い顔をして、事の顛末を話すと、ハーレイジ・コルニアは何回か頷いた。 「そうか、良かったな」 青年の頭を二回叩き、踵を返した。 「待て、ハーレイジ・コルニア。なにをしに来た?」 「……グリモワールの回収を失敗しただろう、それの回収だ」 「……すまない」 「私のベネディクトとしての仕事だ、謝るな、意味が分からん」 ベンチに座ったまま、空を眺めている。それだけでも温かいと思う。未だに未完であるグリモワールだが、青年はそれでも誇らしく言うのだろう。 「変わりませんよ、何時だって。千古不易ですから」 だからこそ青年から大人になりつつある揚は言うのだろう。 「変わらせない、何時だって。親友だからな」
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