第1章

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「あ、あの……なにか質問とか、そういったものはないんですか?」 あまりにあっけなく終わった面接に、あたしは思わず自分からそう訊ねていた。 「ん? いや、とくにはないけど?」 首を傾げてそう言う野田さんに、拍子抜けするあたし。 少しでも緊張していた自分がばかみたいだ。 「じゃ、さっそく商品のほこり取りでもやってよ」 野田さんはそう言うと、スーツのポケットに入れていたハタキをあたしに手渡してきた。 ほこり取りくらいなら別にできるけど……。 そう思い、思わずハタキを受け取ってしまってハッとした。 ダメじゃん! あたしこんな怪しい所でアルバイトなんてできないよ! 「そ、その詳しいバイト内容とか教えていだたけませんか?」 ハタキを握りしめたまま、あたしはそう聞いた。 3カ月ほど前から行方不明になっている友人の顔を思い出す。 同じクラスで仲の良かった女の子が、忽然と姿を消してしまったのだ。
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