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「依頼主は彼女のお兄さん。5年前に交通事故で亡くなってからずっと彼女の事を見守っていたが、彼女の行動があまりにもひどいので、俺に依頼をしてきた」
野田さんは言い争う男女を悲しげに見つめてそう言った。
「彼女に『返す』ものって……」
「今まで関係を持っては捨てて来た、男性たちだ。この部屋はその男性たちの金を使って借りている。彼女は今夜、そのすべてを失うだろう……」
そう言った時、部屋の奥から明るい光が見えた。
身を乗り出して確認してみると、光の中央に若い男性が立っていて、ひよりさんを睨みつけているのが見えた。
あれがお兄さん……。
「お兄さんは、彼女を守る事をやめたわけじゃない。今夜の出来ごとで目を覚まし、そして新たな人生を歩んで行くと思う……」
野田さんはそう言い、エレベーターの方へと歩き出した。
「あのままにしていいんですか!? 2人とも喧嘩してますよ!?」
「いいんだ。あれが彼女が男性たちにしてきた仕打ちなんだから」
そう言いながらも野田さんは一瞬顔をしかめてこめかみを押さえた。
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