第三話

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「ほとんどお前が邪魔して歌えなかっただろ」 京馬も笑顔になり、秀悟にそう突っ込んだ。 「そうそう。秀悟の音痴が横から入ってきて全然聞こえなかった!」 あたしは秀悟へ向けてそう言った。 「なんだよ音痴って! そこそこ歌えてただろ!?」 「音程外しまくってたくせに、よく言うよ」 麻葉がそう言い、笑う。 「え? うそ、俺って下手だった?」 秀悟は真剣な表情になり、そう聞いてくる。 「めちゃくちゃ音痴だった」 茜が真剣な表情でそう返事をしたことで、秀悟は落ち込んだように黙りこくってしまった。 どうやら自分の音痴を自覚していなかったようだ。 ガックリと肩を落として座る秀悟に、京馬が笑う。 それを見てあたしは少しホッとした。 カラオケ以降、京馬はまた笑うようになった。 こうして秀悟とバカみたいな会話をして、昔のような元気を取り戻してほしい。 それが、あたしたちの願いでもあった。
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