第三話

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昨日悪霊を見たばかりのあたしは、そう考えるようになっていた。 「俺は……信じる」 ただ1人そう言ったのは京馬だった。 「え、京馬ってそういうの信じるタイプだっけ?」 茜が驚いたようにそう聞いた。 あたしも、京馬の返事は意外だった。 現実主義者というか、見えない物は信じないようなタイプだと思っていた。 幽霊やUFOなどを『作り物だろ』と、笑ってみている姿の帆が、安易に想像できる。 「信じるようになったのは、つい最近なんだ」 「どういう事?」 あたしが聞くと、京馬は視線を伏せた。 「最近、よく愛由が夢に出てくるんだ」 その言葉にあたしの体に電流が走った。 みんなの表情が一瞬にして険しくなる。 聞いてはいけない事を聞いてしまっただろうか? だけど、今話題を変えればよけいに妙な雰囲気になってしまうだろう。 結局あたしは何もできず、次の京馬の言葉を待つしかなかった。 「夢の中の愛由はいつも悲しそうな顔をしていて、俺に向かって『早く見つけてほしい』って言うんだ。 俺は一生懸命愛由に手を伸ばすけれど、届かない。辺りは真っ暗で、愛由はだんだんその闇の中に吸い込まれて行ってしまうんだ。」 そう言うと京馬は軽く息を吐き出した。 「……戻ってくるよ、きっと」 そう言ったのは茜だった。
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