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身動きが取れない状態でそう返事をすると、野田さんはあたしから離れた。
あたしはホッと息を吐き出す。
骨に皮がくっついているだけのように細い体。
それに黒いスーツを着ているものだから、野田さんは死神にみえなくもない。
そんな人に近寄られると、緊張して思わず呼吸を止めてしまう。
「バイトの内容はこの店の整理整頓。あとは外回りだ」
「外回り……?」
あたしは首を傾げてそう聞いた。
「そう。外回り」
コクリと頷く野田さん。
「どういう仕事をするんですか?」
そう聞くと、野田さんは天井を見上げた。
つられて同じように天井を見上げると、天井の中央に大きな丸い時計が下を向いて引っかけられているのが見えた。
時計の針はお昼を差している。
「お腹が空かないか?」
「え?」
「もう昼だ。昼食を取ろう」
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