第三話

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☆☆☆ それから一時間後。 あたしと野田さんは無言のままお店の掃除をしていた。 野田さんの言う通り、中には生ごみが入れられたナイロン袋まで転がっていて、あたしはそれをしかめっ面で片づけた。 しかし、片づけている内にどんどんそんなゴミが出てきて、あたしは首を傾げた。 野田さんはゴミの中から商品になりそうなものを拾ってくる。 明らかな生ごみが店内にあったことなんて、今まで一度もない。 あたしは手を止めて、事務所の中にいる野田さんを見た。 少しでも匂いを取るため、今はドアというドアすべてが開け放たれているため、野田さんの姿はよく見えた。 野田さんは生ゴミをひっくり返しては首を傾げている。 「野田さん、何を探してるんですか?」 気になってそう聞いてみると、野田さんは怯えたように眉を下げてあたしを見た。 さっき怒られた事をまだ気にしているようだ。 本当に子供みたいな人だ。 「もう怒っていませんから、教えてください」 そう言うと、野田さんはようやく緊張を解いて「犬を探してるんだ」と、言った。 「犬……?」
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