第三話

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あたしは野田さんの言葉に首を傾げる。 このお店の中に犬がいればすぐにわかるはずだ。 嗅覚に優れている犬がこんな悪臭の中耐えられるとも思えない。 あたしなら激しく吠えたててここから出せと言うだろう。 「あ、犬の置物ですか?」 「違う。本物の犬だよ」 「このお店に犬なんていませんよ」 あたしは呆れて野田さんを見た。 しかし野田さんはいたって真剣な顔をしていて「いるよ」と、言った。 「どこにいるんですか?」 「それを今探してるんだ」 そう答える野田さんにあたしはますます首を傾げた。 野田さんはこの熱さのせいで頭がやられてしまったんだろうか? 真剣にそう考えて、エアコンの温度を下げた。 「ちなみに俺は熱さにやられたわけじゃないからな」 「あ、そうでしたか」 あたしはペロッと舌を出してエアコンのリモコンをテーブルに置いた。
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