第三話

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「ってことは、野田さんは本気で生ゴミの中に犬がいないか探しているんですね?」 「そういう事だ」 自信満々に頷く野田さん。 精神病院を探した方がいいのかな? そう思った時だった。 「キャン!」 どこからともなく、そんな鳴き声が聞こえてきたのだ。 あたしは周囲を見回してみるが、どこにも犬の姿はない。 「今、犬が鳴きましたね」 「あぁ。だから、それをずっと探してるんだ」 野田さんはそう言い、1つ生ゴミの袋を開けた。 袋を解放するたびにお店の中の悪臭は強くなる。 吐き気を催すような匂いの中で作業をするのは嫌だったけれど、どこかに犬がいるのなら早く助けてあげないといけない。 あたしはお店に戻り、ゴミ袋に入れていった生ゴミをその中で開封した。 ムワッとした悪臭と共に、ウジがはい出す。 あたしは顔をしかめて、次の袋を開ける。 「野田さん、その犬は生ゴミと一緒に入れられているんですか?」 「否、わからない。とりあえず異臭のするものを探せば出てくるかと思って、生ゴミを一緒に持って帰ってきたんだ」
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