第三話

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☆☆☆ 額の冷たい感触で目が覚めた。 目の前には無精ひげの生えた死神がいて、心配そうにあたしを見ている。 「死神さんでも死んだ人の事を心配してくれるんですね」 優しそうな死神に向かってそう言うと死神はしかめっ面をした。 「俺は死神じゃないし、マオリちゃんは死んでもいない」 その言葉に、目の前にいるのが死神ではなく野田さんなのだとわかった。 上半身を起こして周囲を見回してみると、いつもの事務所のテーブルに寝かされていたということがわかった。 ゴミは随分と綺麗に片付いていて、匂いもほとんどなくなっている。 「野田さんが運んでくれたんですか?」 「当たり前だろ」 「気絶しているあたしに何をしたんですか」 鋭い視線を送ってそう質問すると、野田さんは「なにもしてない!」と、本気で反論した。 「その必死さが怪しいですね」 あたしはそう言い、自分の服に乱れがないかを確認した。
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