第三話

18/51
前へ
/250ページ
次へ
そう説明する野田さんに、あたしは曖昧に頷いた。 ゾンビウイルスに感染していないから、噛まれたりしても大丈夫。 ということでいいようだ。 ひとまずホッと胸をなで下ろしたものの、犬の腐敗臭がひどく鼻につく。 腐った肉というのは強烈なにおいを放つものだ。 あたしはロッカーからマスクを取り出して着用した。 少しはマシになる気がする。 「で、なんでそん事が起こるんですか?」 あたしは野田さんの足元でシッポを振っている犬を見てそう言った。 「無残な死に方をしたり、突然死んだ場合に稀にあることなんだ。魂が体から抜けることができず、体は腐るのに動き続ける」 「成仏っていうのが、できてないってことですか?」 「簡単に言うとそうだな。魂だけになっても天に昇っていけないのと同じ現象だ」 うんうんと頷きながらそう答える野田さん。 同じでも随分と変わって来るものだ。 あたしはそう思って、犬から視線をそらした。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加