第1章

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野田さんはそう言うと、入口の右手に置かれていたボードを手に取り、店のドアの前に置いた。 「それは何ですか?」 「《本日閉店》と書かれた看板だ。隣町のゴミ捨て場で拾ってきた」 そう答えながらドアのカギを閉める。 「ゴミ捨て場!?」 「あぁ。この店にある商品は元々ゴミ捨て場にあったものがほとんどだ」 その言葉にあたしは目を丸くした。 ゴミをかき集めて来てお店をしているなんて、信じられない! 「《リサイクルショップ》って普通、お客さんが使わなくなった物を買い取って販売したりしてませんか? 完全なゴミを拾って値段を付けるなんて、詐欺ですよ、詐欺!」 「詐欺だなんて人聞きが悪いね。よくある《リサイクルショップ》に売られている商品だって、どこかの誰かが捨てようと思った物を綺麗にして並べているだけだろう」 「それはそうかもしれないですけど……」 あたしは言い淀んで口を閉じた。 ああ言えばこう言う。 まるで子供のような人だ。 でもこういう場合、何を言っても負かされてしまうのは目に見えている。
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