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「野田さん、どこかへ行くんですか?」
「あぁ。急な仕事が入ったんだ。申し訳ないけど、今から店を閉めて行かなきゃいけない」
「あたしも一緒に行っちゃだめですか?」
ここまで来たんだし、野田さんに話を聞いてもらうだけでも落ち着くと思った。
「それはいいけれど……今回は少し特別な仕事だよ?」
野田さんが準備の手を止めて、そう言った。
その真剣な表情にあたしは一瞬たじろく。
こんな明るい時間から、黒いスーツのまま出かけようとしている時点で、ただ事ではないと感じていた。
「迷惑はかけないようにします」
「わかった。制服のままはまずいから、これに着替えて」
野田さんはそう言うと、テーブルの上に乱雑に積まれていた古着の一着をあたしに投げてよこした。
広げてみるとそれは真っ白なワンピースで、あたしは少し胸をなで下ろしたのだった。
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