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「その結果、その京馬君って子は体調を崩して早退してしまったんだろ?
愛由ちゃんって子が京馬君にいじわるをしようとしたならともかく、それ以外でトラウマになるような姿を見せるとは思えないけどな」
それもそうかもしれない。
綺麗な姿を見せる事ができるなら、わざわざ京馬を精神的に追い込むような姿を選ぶ必要はない。
「愛由は何を考えて血まみれのまま京馬の前に現れたんだろう……」
「あるいは、その姿しか見せられなかったから、という可能性もある」
野田さんの言葉にあたしは首を傾げた。
野田さんはなにか感づいている事があるみたいだけれど、あたしにはわからない。
その時、トラックが停車した。
窓の外には古い2階建てのアパートが見える。
「ここですか?」
「あぁ。この1階の一番端の部屋の住人へ、返すものがある」
「今回は何を返すんですか?」
あたしはよくやく今回の仕事についての質問をした。
ここへ来るまでに京馬と愛由の事しか話していなかったことを思い出した。
「……愛由ちゃんだよ」
野田さんの言葉にあたしの思考回路は停止した。
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