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「今回の依頼主は愛由ちゃん本人からだ。つい数時間前愛由ちゃんが店に来て、俺にこう言って来た『あたしを犯人の元へ返してください』ってね」
「犯人の元に……ですか? どうして家族や京馬の元へって言わかったんだろう……」
「血まみれの姿のままだからじゃないか? 相手が寝ぼけている状態なら夢と現実の区別がつかなくなっていつか忘れられるかもしれない。
でも、こんな明るい時間に出て行けば、相手はずっと忘れられなくなってしまうだろう」
「だから、京馬の前に現れるのに夜中を選んだんですね」
あたしは愛由の気持ちが少し理解できて、頷いた。
「そうだ。そして犯人にはその真逆の事をして、自分のした罪を理解させるつもりなんだろうな」
「でも、それなら野田さんに頼む必要はなかったんじゃないですか?」
京馬の元へ自分から行けたなら、犯人の元へ帰るのだって自分の力でできるはずだ。
「もちろん。愛由ちゃんが犯人と対面した後、警察を呼んでほしいと頼まれている。それが今回の俺の仕事だ」
野田さんがそう言い終わるとほぼ同時に、若い男がアパートの中へと入って行くのが見えた。
その瞬間、野田さんの表情が険しくなる。
「あれが犯人だ」
そう言われた瞬間、背筋がゾクッと寒くなる。
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