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黒い帽子を被り、Tシャツにジーンズというごく普通の格好をしている青年が殺人犯だなんて、誰も思わないだろう。
愛由を殺した後も彼は当たり前のように日常を送っているのだ。
そう思うと恐怖と怒りが同時に湧き上がって来るのを感じた。
愛由の未来と自由を奪っておいて普通の生活を続けるなんて、許されることじゃない。
あたしは自分がきつく拳を握りしめていることに気が付いた。
「マオリちゃん、君はここで待ってるといい」
「え?」
野田さんの言葉にあたしは目を見開いた。
憎い犯人が目の前にいるというのに、トラックで待っているなんてできるわけがない。
「言っておくが、相手は殺人犯だ。なにが起きるかわからないし、マオリちゃんを守ると言う保障もできない。それに、愛由ちゃんの死んだ姿を目の当たりにすることになるんだ」
野田さんのいう事はわかる。
一緒に行けば足手まといになるかもしれないという事も理解している。
愛由の姿を見たショックでトラウマになるかもしれないと言う事も、わかっていた。
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