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「それでも、一緒に行きたいです」
あたしは野田さんを真っ直ぐに見てハッキリとそう言った。
「マオリちゃん、君は何もわかってない」
「わかってます!!」
本当はなにもわかっていないのかもしれない。
頭で考えるよりも、実際に経験することの方が衝撃的だろう。
自分の私生活を壊すかもしれないし、最悪の場合相手に殺されてしまう危険性だってある。
今回の仕事はあたしが首を突っ込んでいい場所ではないかもしれない。
でも、あたしの大切な友達が命を奪われてしまっているんだ。
あたしはグッと下唇を噛んだ。
言いようのない怒りや恐怖で体が小刻みに震えはじめるのがわかった。
泣く気なんてないのに、自然と涙が浮かんできてすごく悔しい。
愛由はもっと怖くて、痛くて、絶望を感じていたはずだ。
それなのに、こんな所であたしが泣くなんて……!
「……来た」
野田さんの静かな声が聞こえてきて、あたしは窓の外に目をやった。
トラックの前の方からゆっくりゆっくりと歩いてくる人影が見える。
それはまだまだ遠くて、真っ黒な影のように見える。
だけど、それが愛由であることはすぐにわかった。
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