第三話

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「マオリちゃん、目を閉じてろ」 「嫌です」 「本当にトラウマになるぞ!?」 「それでもいいです」 あたしは近づいてくる人物から目をそらさなかった。 愛由がどんな状態でいても、あたしはそこから逃げたりしたくなかった。 野田さんはまだ何かを言おうとしていたけれど、途中で諦めて言葉を飲み込んだようだった。 人影は徐々に徐々に大きくなっていき、その度に足を引きずるような音が聞こえて来た。 ズル……ペタ。 ズル……ペタ。 と、繰り返す。 歩くたびに長い髪が大きく揺れて、その顔を隠している。 右の足首から先がなくて、それで歩きにくいのだと言う事がわかった。 何度か見たことのあるキャラクターもののTシャツは真っ赤に染まっていて、その笑顔のイラストをかき消していた。 途端に、あたしは愛由の笑顔を思い出していた。 『見て見て! このTシャツ、可愛いでしょ!? 京馬とお揃いなんだよ!!』
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