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「マオリちゃん、目を閉じてろ」
「嫌です」
「本当にトラウマになるぞ!?」
「それでもいいです」
あたしは近づいてくる人物から目をそらさなかった。
愛由がどんな状態でいても、あたしはそこから逃げたりしたくなかった。
野田さんはまだ何かを言おうとしていたけれど、途中で諦めて言葉を飲み込んだようだった。
人影は徐々に徐々に大きくなっていき、その度に足を引きずるような音が聞こえて来た。
ズル……ペタ。
ズル……ペタ。
と、繰り返す。
歩くたびに長い髪が大きく揺れて、その顔を隠している。
右の足首から先がなくて、それで歩きにくいのだと言う事がわかった。
何度か見たことのあるキャラクターもののTシャツは真っ赤に染まっていて、その笑顔のイラストをかき消していた。
途端に、あたしは愛由の笑顔を思い出していた。
『見て見て! このTシャツ、可愛いでしょ!? 京馬とお揃いなんだよ!!』
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