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☆☆☆
アパートの一階はすべて駐車場になっているため、1階の部屋でも階段を上がる必要があった。
階段は所々ひび割れていて、歩くたびに崩れ落ちてしまうんじゃないかと不安になった。
愛由は右の足首から下を切断されているため、体をあたしに預けるようにして歩いている。
腐り始めた肉の匂いがツンッと鼻の奥を刺激するけれど、愛由の匂いだと思うと我慢することができた。
「足、痛くない?」
ゆっくりと階段をのぼりながら、あたしは思わずそう聞いていた。
「切られた時は、痛かったよ。あたし、まだ生きてたから。でも死んでからは全然痛くないから大丈夫」
「そっか……」
愛由の返事にあたしは一瞬顔をしかめた。
生きたまま足首から下を切断されたという事実に、胸の奥から吐き気がこみあげて来た。
男は愛由の足首から下だけを切断した。
つまりそれは、生きたまま逃げだせないようにしていた。
ということじゃないだろうか。
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