第三話

44/51
前へ
/250ページ
次へ
「誰だ!?」 玄関のドアが開いた事に気が付いた男が、部屋の奥から声を上げる。 「あなたの忘れ物を届けに来ました」 野田さんは満面の笑顔を浮かべてそう言い、土足のままズカズカと部屋へ上がり込んで行く。 先に入った野田さんに手招きをされて、あたしも同じように部屋に足を踏み入れた。 その瞬間。 アニメのポスターが目に飛び込んできた。 入ってすぐ6畳ほどのフローリングになっているのだが、その壁や天井全体がポスターで埋まっている。 右手の壁際には3つの本棚が置かれていて、そのどれもが美少女系の漫画やゲームで溢れかえっていて、一瞬にして気分が悪くなった。 「なんなんだ、お前ら!!」 突然現れたあたしたちに、男はすごく興奮した様子で声を荒げている。 この男が愛由を殺したのだと思うと怒りが湧きあがってくるのがわかる。 熱くて醜い、ヘドロのような感情があたしの中を駆け回っている。 「庄司愛由って知ってる?」 あたしは野田さんを押しのけ、男の前で仁王立ちをしてそう言った。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加