第三話

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「はぁ? 誰だよそれ」 男は眉間にシワを寄せて人を見下したような表情を作ってそう言った。 その態度が気に入らなくて、あたしは男の前髪を力任せに掴んでいた。 あたしが暴力的な行動に出るとは思っていなかったのか、男は驚いたように目を丸くし、逃げられるはずなのに逃げる事すらできずにあたしを見た。 「あたしの友達」 そう言った時だった。 入り口の方で物音がして、男の視線がそちらへ移動した。 その瞬間、男の表情が凍りつくのがわかった。 愛由が部屋に入って来たのだ。 「まさか……」 男の体が小刻みに震え始める。 自分が殺したはずの愛由が目の前にいるからだ。 あたしは男から手を離し、振り向いた。 愛由がまっすぐこちらへ歩いてくるので、邪魔にならないようにスッと身をよけた。 よく見ると、部屋に貼られているまりりんと言う名前のキャラクターと愛由が似ている事に気が付いた。 「まりりん、なんで……!?」 男が愛由へ向けてそう言う。 やっぱり。 この男は二次元のキャラクターと愛由を被せてみていたのだ。
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