第三話

48/51
前へ
/250ページ
次へ
「最低」 胸の奥から湧きあがった言葉をそのまま男へ投げかけた。 趣味は自分が楽しめばいいものだ。 他人を巻き込みその人生を狂わせるものじゃない。 「だって現実の女なんて……!」 更に言いわけを続けようとする男に、愛由が手に力を込めた。 愛由の指が男の首にギリギリと食い込んで行くのがわかる。 男は白目をむき、失禁をして気を失った。 愛由がそれを見て手の力を緩めた。 男は自分の尿の中に倒れ込む。 しかしまだ息はあるようで、胸は上下に動いていた。 「いいの?」 あたしは愛由へ向けてそう聞いた。 「あたしはこの男と同じ殺人犯にはならない」 愛由はキッパリとそう言いきった。 そして、その場に膝をつき大の字に横になる。 その顔はとても穏やかで、今にも眠っていまいそうに見えた。 「俺は警察を呼べばいいんだね?」 野田さんが愛由に確認した。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加