第三話

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☆☆☆ それから野田さんはポケットからハンカチを取り出すと、自分が触れた場所を丁寧に拭き取って行った。 その間、あたしはジッと愛由の死体を見つめていた。 どれほど怖くて、痛くて、つらい思いをしたんだろう。 愛由の強い憎しみが体から離れる事なく、こうして犯人の元へ戻って来ることになった。 生死の壁を超えるほど大きな感情が、愛由の中に存在していたのだ。 だけど、愛由の寝顔はとても穏やかだった。 すべてを終えてようやく休むことができた。 そんな、少しほほ笑みをたたえた寝顔だった。 「さぁ、行こう」 すべての処理を終えた野田さんがあたしの肩に手を置いた。 あたしは愛由から視線を外さずに「はい……」と、小さく頷いた。 できればこのまま愛由から離れたくない。 そんな気持ちが湧いてくるが、愛由の願いは男の罪を公にすることだ。 ここにいるわけにはいかない。 野田さんに促され、あたしはようやく重たい体を動かし始めた。 たった数十分の間で一気に年を取ってしまったように、体はズッシリと重たくて疲労感がある。
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