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☆☆☆
そして、それから数週間が経過していた。
夏休み前の試験のできはまぁまぁで、どうにか赤点は免れていた。
今日の試験が終わればあとは終業式まで学校は休み。
毎日のテスト返却だけ少し億劫だけれど、クラスの大半が夏休みムードに染まっていた。
「マオリは夏休みの予定なにか決めた?」
登校してきてすぐ茜と麻葉がそう言ってきたので、あたしは首を傾げた。
正直、まだ何も決めていない。
そんなあたしを見て茜は呆れたような顔を浮かべた。
「マオリ、あんたなんのためにバイトしてんのよ」
「そうなんだけどね……」
そもそもあたしが野田さんのお店に惹かれたのはアルバイト募集の広告があったからだった。
夏休み前の1か月である程度稼いで、夏休みは沢山遊ぶ!
というのが、今年の夏の目標だ。
時給がいいためお金は確かに貯まっているのだけれど、使い道はと聞かれれば首を傾げてしまう。
海のレジャーに出かけてもいいし、花火大会に参加してもいい。
イベントは沢山あるのだけれど、『夏休み』と聞いて浮かんでくるのはなぜか野田さんの顔だったのだ。
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