第4話

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あんな死神みたいな人と海に行ったらみんな怖がって逃げてしまうだろうし、花火大会だと野田さんの趣味の浴衣を着せられそうだ。 どっちも嫌だ。 それなのにどうして野田さんの顔が浮かんでくるのか……。 考えてみると、それは『返す』仕事に興味を持ち始めたからじゃないかと、自分なりに分析していた。 愛由の一件があってから、あたしは『返す』仕事には人の気持ちが深く関係していることを知った。 今までは悪い事ばかりを『返して』きたけれど、もしかしていい事を『返す』仕事だってあるんじゃないか? そんな気がしたのだ。 腐敗を始めた犬の時がいい例だ。 あんなふうに、人と動物を引き合わせたりして幸せになってもらう。 それが『返す』仕事の本来の姿なら、あたしは野田さんのお店でバイトを続けたいと思った。 「とりあえず、もう少し稼ぎたいから夏休みの一週間くらいはバイトしてるかも」 あたしはそう返事をして、笑ったのだった。
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