第1章

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心の中で不満をブツブツと呟きながら、あたしは親子丼弁当を選んだ。 野田さんはデパートのポイント券を使ってあたしにお弁当を奢ってくれた。 奢るという言葉に嘘はないから、いいんだけど。 なんだか納得できない。 あたしと野田さんはトラックに戻りお弁当を食べることにした。 気温は随分高くなってきて冷房のきかない車内は蒸し風呂に近い。 しかし、あたしが「店内の飲食コーナーで食べましょう」と提案してもアッサリ却下されたので、こうして汗だくになりながら親子丼を食べることになった。 ……どうして? こんなはずじゃなかったのになぁ。 額の汗をぬぐいながらあたしは考える。 今日は一応面接に来ただけだ。 そしてさっさと帰るつもりだった。 なのに、どうしてあたしはこんな所で親子丼を食べているんだろう……。 考えるとなんだか急に悲しくなってきて、あたしは考えるのをやめた。 お弁当を食べたら、バイトをキッパリ断って家に帰るんだ。 野田さんの《リサイクルショップ》だってもう行かない。 だって商品は全部ゴミだもん。 それで明日からはまた平凡な日常に……。 そこまで考えた時、野田さんが「あっ」と、小さく呟いた。
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