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野田さんの言葉にあたしは沈黙し、そしてシロを見下ろした。
シロは相変わらずしっぽを振っている。
「あたしに霊感……ですか?」
――そうだ。前にも言っただろ。霊感がある人間と一緒にいると、見えるようになるって。
少しめんどくさそうにそう説明する野田さん。
「つまりそれって、野田さんのせいじゃないですか!!」
突然大きな声を上げたあたしに、野田さんがブツブツと文句を言っているのが聞こえてくる。
――バイトなんだから仕方がないじゃないか。それに、呼ばなくてもマオリちゃんが店に来るんだから、俺にはどうしようもない。
「うっ……」
確かにそうだ。
暇だからなにかないかと思ってお店に行ったりしているのはあたしの方だ。
――とにかく、見えるだけならなにも問題はないだろうし、その犬は守ってくれている。なんの心配もないってことだ。
早く電話を切りたいのか、野田さんは話をまとめようとしている。
「そうですか……」
ついでにエアコンの事も話そうかと思ったが、自分の霊感が更に強くなっては嫌なので黙っておくことにした。
エアコンも、ほっとけばいいや。
そう思い、電話を切ったのだった。
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